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FCoV (猫コロナウイルス)

AMIS資料より(獣医師用)

<検査の意義>

現在、猫には少なくとも大別して2種類のコロナウイルスがあります。一番多くみられるのは、病気を起こす力が弱く腸に感染するコロナウイルスです。しかし一部の猫の体内でこの弱いコロナウイルスは突然変異をおこし、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPウイルス)に変わります。そのような猫ではFIPの発症がみられます。
この検査は、猫の血液中にコロナウイルスに対する抗体があるかどうかを調べます。この抗体は弱いコロナウイルス、FIPウイルス、どちらの場合にも陽性になり、この検査だけで2つを区別することは出来ません。
日本の飼い猫の約半数はコロナウイルスに対する抗体を持っています。しかしFIPを発症するものはまれです。抗体が高いだけではFIPと診断することは出来ませんが、FIPを疑うサインのある病気の猫では、抗体の検査は診断の補助になります。
家の中の猫を全部検査して、すべて抗体が陰性ならば、その家ではFIPは非常に起こりにくいといえましょう。しかし、家の中の健康猫に抗体が見つかった場合は、弱いコロナウイルスの感染がまず考えられますが、今後FIPが発症する可能性も考えられます。


<検査結果の解釈>

1. 猫伝染性腹膜炎に特徴的と思われる症状あるいは異常が見られる場合
特徴的な症状あるいは異常とは
若い猫または老齢猫,軽度から中等度の貧血,発熱と元気消失,高蛋白(高グロブリン),下痢,特徴的な性状の腹水・胸水,目の白濁,腹腔内の肉芽腫病変,神経症状
<100: (抗体価 100以下)

FIPウイルスに感染していない可能性も高いので、腹水の症状など再検討して裏の原因を追及する必要があります。ただし、FIPウイルスに感染して発症していても、ウイルスと抗体が免疫複合体を作るなどの理由で、抗体価が低下してしまう場合もまれにあります。

100~6400:

FIPの診断が指示されます(FIP発症例では確かに抗体価の高いものが多い)。


2. 猫伝染性腹膜炎の特徴的な症状はないが、発熱、食欲不振、消化器症状などあり
<100: (100以下)

コロナウイルスにも、FIPウイルスにも感染している可能性はきわめて低いと思われます。現在の症状は別の原因によるものでしょう。

100~400:

低い抗体価なので、過去にコロナウイルスと接触したことは明らかですが、現在ウイルスがいるかどうかははっきりわかりません。ただし、現在の症状の原因としてコロナウイルスの関与もまた考えられます。これからFIPを発症するか悪率はあまり高くありませんが、念のため1カ月以上経てから再検査し、抗体価が下がっていれば安心して良いでしょう。

800~6400:

弱いコロナウイルスの感染でもこのような抗体価がみられることはありますが、普通症状はみられません。したがって、現在FIPウイルスが体内にいて、症状の原因になっている可能性も考えておく必要があります。血清蛋白電気泳動に加え、ドライタイプFIPを思わせる異常がないかどうか詳しい検査が必要です。血清蛋白電気泳動に加え、ドライタイプFIPを思わせる異常がないかどうか詳しい検査が必要です。ただし症状が消え、1カ月以上経てからの再検査で抗体価が下がれば問題は少ないでしょう。


3. 健康な場合
<100:

現在コロナウイルスに感染しているとは思われないので当面は心配ありません。この猫が室内飼育の場合、他の猫を導入する際に抗体陰性を確認すれば、この家庭ではFIPの発生はみられないでしょう。

100~400:

低い抗体価なので現在ウイルスがいるかどうかはっきりわかりませんが(一度上がった抗体価が下がっていく途中のことが多い)、健康なのでまず問題は少ないでしょう。

800~6400:

現在コロナウイルスが体内にいるために抗体価が高いか、あるいは高い抗体価が下がっていく途中かのいずれかが考えられます。FIP発生の確率は、猫にストレスがかかった場合、最大で10%程度です(猫の体内でコロナウイルスが強毒のFIPウイルスに突然変異)。このまま健康で1カ月以上経過してからの再検査で抗体価が下がれば問題は少ないでしょう。


4. 再検査の場合
前回より抗体価が下がっている:

ウイルス感染が消失に向かっているよい兆候と思われます。

前回より抗体価が上がっている:

これからFIP発症に向かう可能性もあるので要注意です。

上がったり下がったりを繰り返す:

複数飼育の猫の中では、弱いコロナウイルスの感染が行き来することがあります。ストレスや他のウイルス感染を避けて、ウイルスの突然変異が起こらないようにしましょう。


<低い抗体価の解釈>

FIPは現段階に置いて確定診断が困難な猫の疾患の一つであります。抗体価の測定を行っても確定診断に至らないことが多くあることより、臨床症状、年齢、飼育環境、抗体価、血液検査、胸・腹水の性状/細胞診検査などから、診断を進めていくことになります。

低い抗体価の原因
  • FIPではないが現在弱いコロナウイルスに感染している場合
    • 腸管に感染するコロナウイルスに対する抗体を検出している場合です。弱いコロナウイルスは、非常に多くの猫で認められています。
  • 過去のコロナウイルス感染の場合
    • 過去の弱いコロナウイルス感染で、一度抗体価が高くなり、その後ウイルスは消失したが、抗体が加工している途中の場合。
  • 現在FIPを発症している場合
    • FIPの末期で免疫機能が衰え低い抗体価を示している場合。
    • 幼齢や老齢のため。あるいは他の疾患のため、十分に抗体を産生できない場合。
    • 抗原が過剰で抗体が中和され、血中のフリーな抗体が少なくなっている場合。
    • FIPウイルス感染中における抗体価は、病気の進行に比例して必ずしも上昇するわいけではなく、上下の変動も多く認められるので、たまたま抗体価が低いタイミングの時に測定をしてしまった場合。

<まとめ>

  • 抗体価がたかいだけでFIPと診断しないでください。
  • 抗体価が高く、腹水・胸水がみられない症例を直ちにドライタイプFIPと診断しないでください。腹腔内の肉芽腫性腫瘍あるいは髄膜炎、眼病変などの検出が必須です。
  • 子猫は4週齢で抗体陽性猫から隔離すればコロナウイルス感染を免れます。
  • 抗体陰性の群からFIPは発生しません。
  • 抗体陽性の群では、最悪の飼育条件で、年間のFIP発生率は約10%です。
  • 抗体がみられても、現在FIPに特徴的な臨床症状などがみられない場合は、1-2カ月おいて再検査を行うのがよいでしょう。
  • FIPに特徴的な異常がありながら低い抗体価をする症例もまれに存在します。その場合、抗体価は考慮に入れず、FIPと仮診断することも可能でしょう。
2006年03月01日(水)